戯言がいっぱい。

めもちょー

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Successor Of Dragon  その29

2つずつになっちゃった。
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 俺は早足気味に、後に続くものから見れば逃げるように歩いたが、アルフェイリアの歩み、奴の長身が備え持つ長い足は、俺の意に反して奴を俺の近くへと運んだ。


「まあまあ、そう堅いこと言うなって」

「いつにも増して機嫌が良くて鬱陶しいな、お前は」

「おお、分かるか?」

 分からない筈が無い。本来ならば、アルフェイリアにとっては夜通しで酒に酔いながら祭りに興じていたい程のイベントだ。他に何も考えることなく、ただ喜び楽しみたい、それが奴の心からの願いだろう。


「なんつっても、今日のメインは俺じゃなくてビビなんだ。こんなことは滅多にねえしなあ」

 アルフェイリアが貴賓席の一つに座り込んで、大人しく場を眺める。考えてみれば奴が即位して以来、こんなことはおこりえなかった。奴が式典当日に俺とこうして肩を並べること自体、異例だといえる。それだけに、この分かりやすい警告が邪魔なのだろう。

 俺が組合長などにならなければ、事態は避けられただろうか。


「シャドウ」

 耳元からの声に俺は驚かされた。


「シャドウのせいじゃないよ」

 耳元から話しかけたにも関わらず、その声は普段俺と対面して話すそれと変わらない調子なので、俺の身体は一瞬だけ強張ってしまった。


「どういう意味だ」

「そんくらいは分かるもんね」

「あれ? もしかしておめえそんなこと気にしてたのか?」

 そんなこと、俺の杞憂はその一言で一蹴された。


「宴の席なんてもんは、危ねえもんだって相場が決まってるじゃねえか。大きければ大きいほど、危ねえんだからよ。第一、お互い様じゃねえか、危ねえのは」

 確かに、こういった、特に成人式等の重要な式典を無事に成功させることは国の威厳に関わることであるから、古くからあの手この手で阻止されてきたものだ。

 大きな催しを成功させることはこの大陸の伝統的な価値観により、特に重要視されている。そして宴に何かしらのトラブルが生じると、その宴を催した国の治安が問題視されたり、威厳が地に墜ちたりもする。この価値観は1000年前の俺の若かりし頃の時代から何ら変わっていない。ただ、いつのまにやら、イベントにはハプニングが付き物だという常識が作られてしまっただけで。それだけに、その分式典を成功させることによる誉れはより大きくなったようだ。

 だが、だからといって、こんな大事な問題を一蹴されてたまるか。


「あの地図を渡すことは、お前も承知していたことだったのか?」

「……ビビに運ばせるつもりはなかったんだけどなあ」

「随分な賭に出たもんだな」

「そうだなあ。でも、多分いけるんじゃないかなあと思ってるよ」

 奴らがどうやってこの城の中に入り込んでくるかは分からない。また既に潜伏者がいるとしても、大人数ではないだろう。俺が育成し、城に送り込んだ魔法使いの中には、そういった潜伏者を見破る技術に長けた者もいる。そいつの目を逃れた者、あるいはその魔法使いの腕を持ってしても見抜けない程の腕の魔法使いが紛れ込んでいるとしても、こちらに尻尾をつかませないということはないだろう。少人数ならばまだ可能であるかもしれないが、大人数となればどれ程優れた魔法使い達の行為としても、紛れることは不可能だ。

 まず、城に仕えるということは、無論アルフェイリア、引いてはグロスヴァンド一族と主従関係を結ぶということであるが、その際に交わす服従の誓いは、単なる形式的なものではない。俺は魔法というのはこういう時に役立つべきものであると常々思っている。例えば今、この城のどこかでアルフェイリアを殺そうとどこぞの兵士が思い立ち、武器を手にアルフェイリアの元へ向かおうとしたならば、アルフェイリアはそれを知ることが出来る。対象となる行為は『裏切りの意志を持ち、それに即した行動をする』ことで、先の例の他には『密書を敵に渡す』『食べ物に毒を盛る』など、実質的なものに限定され、しかも直接的な制裁を下すことが出来ずにただ誰が裏切った、ということを知るだけではあるが、それだけでも随分と勝手が違うものだ。実質的な行為に限定する、のは随分と不便なものに聞こえるが、裏切るには実質的な準備が絶対的に必要となる。今日という日を待って行動を起こす潜伏者がいるとしたら、それは尚更のことで、何かしらの準備をせねばなるまい。だがその兆しが見えない、ということは少なくとも周到な潜伏者はいないということになる。何せ、このことは俺とアルフェイリアとビビのみぞ知ることなのだからな(服従の誓いを交わすために使う道具を作ったのは俺だからな)。そしてその誓いを解くすることは、アルフェイリアが死ぬか王権を交代するか、改めてアルフェイリアへの服従をやめる、ということをアルフェイリアの了承のもとで誓わなければならない。他者の介入で……俺でさえも、その誓いを解くことはできない。少なくともその誓いが解かれた場合もまた、それはアルフェイリアの知るところとなるからだ。

 もう一つ、この城に侵入した場合だが、こちらの場合も人数の限界がある。侵入の難しさは、そのまま幻影魔法の限界とリンクしているからだ。幻影魔法は、その名の通り、相手、場合によっては自分を錯覚させる魔法だ。単なる魔法の一分野に過ぎないと思われがちであるが、幻影魔法を使いこなすということは魔法を使いこなすということに留まらない。というのも、幻影魔法を見破ることは、幻影魔法を施すことよりも遥かに容易なのだ。どんなに優れた魔法使いでも、絶対に見破られない幻影魔法をかけることは不可能で、ある物体を違う物体に見せかけたとしても、その物体に幻影魔法がかかっていると分かれば、俺やある程度の域に達した魔法使いならば確実に見抜けてしまう。こう言ってしまうと幻影魔法は不便だと思われてしまうだろうがそんなことはない。ようするに、見破ろうとしなければいいのだ。相手がまさかと気にもかけないものに幻影魔法をかけてしまえばよい。幻影術士(幻影魔法を得意とする魔法使い達)とそれを見破ろうとする者たちは、いつの時代にも終わりの無いいたちごっこを続けている。長い魔法の歴史は、幻影魔法のある程度のパターンを知らせてくれる。こういう時にこういうものに注意しろ、といった具合に。だが、その歴史の教訓を鵜呑みにした魔法使い達を欺くように幻影術士は盲点をついてくる。その盲点がまた、魔法使いの歴史として書物に刻まれていく。その繰り返しは終わらない。

 そして嫌らしいことに、レジーはおそらくこの大陸一幻影術士だ。大抵の幻影術士は所謂教科書通りのセオリーな幻影魔法を使うものたちだが、レジーは……その人生経験が生み出したものだろうか、奴の幻影魔法の嫌らしさときたら筆舌に尽くしがたい。相手の一番いやな時にいやな幻影をかける。なんといっても奴の見上げるべきところは、大概の幻影術士が幻影魔法を酷使し、それに頼り切るところを、奴は幻影魔法の使いどころをここぞという時のみに抑えているということだ。

 魔法の妙とでもいうのだろうか、魔法使いとして未熟な者ほど魔法を多用し、熟練した魔法使い程魔法の使用を抑える。魔法を使うべきでないところはできるだけ魔法を使わないほうがよいのだ。極端な話、相手が近くにいたら攻撃的な魔法を使うより、殴った方が早い。それを踏まえて俺は組合員どもに、もっと身体を鍛えろと言っているのに、あいつらときたら。

 そういった理由で、もしもレジー一人がこの城の中に紛れているとしたらこれはもうお手上げで(ある意味レジーを袋叩きにするチャンスであるが……。まずありえない。そんな馬鹿なことをするような奴が俺の弟だったら可愛げがあったのに)、見つけようがないが、幻影術士が大量にこの城の中に侵入しているとしたら、とっくに数名は見破られているだろう。そういった理由で、ここにはさしたる程の侵入者はまずいない、と言うことができる。

 だが、それは逆に不安であった。誰も見つからない、誰も裏切っていない。レヴァノイア側は何か奥の手でも持っているのだろうか?

 アルフェイリアの予定では、どうせどうやっても攻め込んでくるというならば、この城に攻め入ってくるという大役を任されるような人物を逆に待ち構え、討ち取ってしまおうというものだ。


「いや、すまねえなあ……」

「何が?」

「魔法使いは魔法使いに任せろって言われても、やっぱりよ。おめえなら大丈夫だろうけどさあ」

 あわよくば、レジー……とまではさすがに望めないだろうが、事が起こった場合、その役目を仕切る人物の元へ一目散にかけよって倒す。それが俺の役目だが、何故だかアルフェイリアは俺の勝利に絶対的な自信を持っているらしく、逆に俺にそういった危険な役目を背負わせることを懸念している。危険にさらされるのは、俺よりもこの城だというのに。


「かわりにお前が行くか? お前が謝る相手が俺だけでなく、国民全員になっても俺は知ったこっちゃねえがな」

 そうなった場合の事態を想像したらしく、ばつが悪そうな顔をしたアルフェイリアの顔を無視しつつ、俺たちは貴賓席に辿り着いた。むあっとした、刺激臭といっても差し支えの無い匂いを含んだ空気が俺を歓迎した。相変わらず嫌な空気だ。
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  1. 2008年08月22日 11:02 |
  2. SOD(小説)
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Successor Of Dragon  その28

ひさしぶり。
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 飾られたように並べられたいかつい鎧の騎士達が、波を立てるように俺の歩きにあわせて順番に軽い礼をする。セイは俺の後ろ首を掴みながら左右を見回し、縮こまった。もう俺の方に乗るには大分重くなってしまうほど成長したと思うのだが、やはりまだまだ、中身はただのガキだ。

 静かな方であるはずの俺の足音ですらコツコツと響く王へと続く一本道の終点で、俺は不本意ながらも一礼をした(あまり雑にやるとうるさく言われるから丁寧に丁寧に)。


「いやあ、分かっているとは思うけれどお前で最後な」

 何かある程度規模のある催しの度に、アルフェイリアの親族や貴族、列席する同盟主はアルフェに挨拶をしなければならないという風習があるらしい。俺もこいつと同盟を組んでからは、その形式的な儀式に参加することを強制され、渋りながらも行っている。一つだけ幸いなことは、その謁見には護衛も共も連れて行くことができないということだ(セイは例外として認められているようだが)。まあ、物騒な連中を護衛と称してぞろぞろと連れてこられ、そのままクーデターでもされたら困るだろうから当然の処置ともいえる。

 今でこそ脇に騎士達が控えているが、一昔前は完全なる一対一の対面だったらしい。そもそもその儀式の意味は、王と親しいものとの信頼関係の確認のためだったらしいからな。さすがにこの時代にその理屈は適用しないだろうから、取りやめになったらしいが。


「はぁ。お前の権限で中止することはできんのか?」

 俺の無礼な発言は年の功もあってか多めに見てもらっているらしい(一応国と組合は形式的には対等といえど、実際には組合は国の付属物として扱われることが多い)。もともとこの儀式は堅苦しい発言を強要するものではないから、余程の事がない限り咎められないものであることだ。


「まあまあ、こういうのも意外と必要だったりするから、そこは我慢してくれよ。ところで、グラスはふたつ……みっつでいいか?」

 俺の返事は代わりにセイが答えた。


「俺も、俺も飲む!」

「ははは、分かった。少しだけにしろよ?」

「うん!」

 アルフェイリアに近づいて跪き、杯を受け取るものの、すぐにセイにかすめとられた。
 金粉を塗りたくった贅沢なものだが、そんな扱いでいいものだろうか。


「よし、そろそろ俺もいかなきゃなあ。ついでだし一緒に行くか?」

「遠慮しといてやろう。俺はものものしいのは好きじゃねえ、カチャカチャ煩そうだしな」

 ずっしりとした金属製の鎧に身を包む奴等に囲まれていても、息苦しさは微塵も感じない。それどころかどことなく緩んだ空気が流れているようにも感じられる。ひとえにこいつの性格のせいだろう。

 謁見の間の扉に差し掛かるまで、道の両端に並ぶ兵士どもの、好印象とはかけ離れた視線がささる。原因は分かっている。少なくとも、今しがた俺がアルフェイリアの誘いを無視したこととは無関係だ。

 そんなことを知る由も無いはずであるセイは、今の自分の行為に非があったのだろうかと、情けない顔をしながら左右を見渡し、俺の首にしがみついた。セイの成長とともに増してきた体重が俺の首を圧迫する。その習慣にもそろそろ見切りをつけるべきだろうと思うのだが。

 アルフェイリアの生まれはこの城ではない。だが、この城は間違いなくアルフェイリアの故郷、と呼ぶに相応しい場所だ。その故郷を戦争の贄に出す気分は一体どんなものだろうか。それとも、奴はいつものように愚かにも俺をそこまで信頼しているのだろうか。

 金属のこすれあう音が静かに響いた。やたらと耳障りの悪い音だ。静かな場がその不快感を助長する。

 兵士どもの足音は、俺とはちょうど反対の方面へ向かった。俺の記憶が正しければ一番人の混み合う場所へ向かっているはずだ。一般客の集う場へ。おそらくはその大衆の見張りに行くのだろう。

 列の後方の数人が分かれて俺の後ろをついてきた。最後についてくるアルフェイリアを含めて、こちらは俺と同じく貴賓席(ルヴァオールに限らず、貴族どもと接触するだけで煩わしいのに、動かずに長時間座れというのだから全く持って眩暈がする)とやらへ向かう足取りだろう。その行為は故意にしていることではないだろうが、誰か、それも赤の他人を含む者に背後を取られるというのは、何とも嫌な気分だ。まあ、よくよく考えれば、俺がいい気分でいられることの方が珍しいのだから、単にいつもと同じ気分であるだけ、ということなのかもしれない。

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  1. 2008年08月22日 10:59 |
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