戯言がいっぱい。

めもちょー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --年--月--日 --:-- |
  2. スポンサー広告

ふう

ただいま実家。
ということで流しんぬ。
ばあちゃん家でこつこつ書きました

次の火曜日にはネット開通するけれどそれまではオフラインだったので
小説がすすむすすむ。


ペンタブは持っていったら家のマウスがなくなるので無理でした
でも次は持っていくもんね



あ、言い忘れていたけれども大学生活かなりエンジョイしてます。
楽しいわ。大学最高だな!
スポンサーサイト
  1. 2009年04月11日 10:26 |
  2. 戯言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その49

サイトで一気に見るならこちら






 転移魔法に何かしらのトラウマを抱え始めた俺に、ウィスパがさらに告げた。


「それだけではありません、マスター。さらに五万程、今グレミランを渡っているようです」

 第二部隊。だが、これは予想の範疇だった。たった五万、何ほどのものだ。


「それで、アルフェイリアの、奴の言葉通りに、組合員どもを守るために、半数を組合へ寄越そうということか」

「はい。無論、被害を被ったこの城の警備も怠れませぬ。こういう事態になったとはいえ、やはり城はこの国の中核です。我々の半数を持って全力で守りたく存じます、王の仰せのままに」

 これは止めても無駄だろう。ウィスパら王の手足にとって、俺の命令など雑兵の戯言のように脆いものだ。それに手足は、常に頭とあるべきものだ。アルフェイリアがあんな状態とはいえ、身が俺の組合にある以上、側で控えておきたいというのは確かな心情であろう。懸念である、さらなる転移魔法も……レジーにあれだけのものを喰らわせてやったのだ、もう寄越したところで何もできまい。残る心配事はハイドとブライ、こいつらが直接乗り込んでくることだ。おそらく奴らもあの五万の軍隊の中にいるはずだ。転移魔法の有無に関わらず、締めてかからねばなるまい。こちらの使える魔法つかいは、ほとんどが王の手足だ。その殆どが国民に被害が広がらないように奔走している。それも勿論極めて重要な任務だ、こちらはこちらで何とかするしかあるまい。


「それで、マスター。もう一つ、言いにくいのですが……」

「まだあるのか。もう悪い知らせは足りているぞ」

 腹の細胞が、剣によりこじ開けられた部位が治りかけている。貫かれたときよりも強く、セイにぐいぐいと剣を引っ張られた時と同じほどの痛み。その痛みと戦っているという時に、これ以上の不安要素をぶつけてくるのか。


「いいえ、良い知らせです。転移し損ねたらしき相手側の魔法組合の者を捕らえました。マスター、アレをお願いします」

「アレをか……。なるほど、いい知らせだな。相手の者を捕らえたということも大きいが、転移魔法の失敗ということはそれが奴らが使える転移魔法の限界ということだろう。ウィスパ、どうせなら向こうで行うことにする。厳重に拘束し、共に運んでおけ」

 当分、もう転移魔法は使用してこんということだ。おそらくレヴァノイア国王代理だと踏む奴の魔力もようやく底をつきたということだろう。往復分の魔力だけを用意したと見える。そこから想像するに、俺の魔法組合には正面から対峙する心積もりであるということだ。


「アレ? アレってなあに」

 セイは自分の無知さを知っていてか、知らないことがあればすぐに食いついてくる。だが、ウィスパがアレと体よく誤魔化したものの内容は、あまり公言するべきではないことだ。


「お前は知らなくていいことだ」

「またそうやってはぐらかさないでよ! さっきだってシャドウ、俺がいなかったら大変だったんだよっ」

「それがどうした。手柄の有無など関係ない」

 獣や龍を引き裂いたことはあっても、今回の、相手側の組合員の命を絶ったことはセイにとっては初めてのことだろう。相手の首級をあげたことを誇りに思っているようだ。勿論それはありがちな感情ではあるが、褒められたことではない。俺は突き放すように手柄を鼻にかけるセイを一蹴した。そうは言っても、俺の過去を振り返ればまだこの子悪魔は大分ましではあるのだが。

 奴らが、生身の人間どもが俺を人間として見ていないように、俺もまた奴らを別種の生き物としてとらえる節があるらしい。俺は奴らの生死に興味を持てない。持つつもりが全く無いわけではないが。それがまた、俺が他の者どもに快く思われん理由の一つではあるだろう。さすがに龍や家畜に対するそれまでとはいかないが。同じ容姿をしているからな。

 ヘルゼはただ黙って俺の傷の修復を待っているようだ。一刻も早く主君のもとへ急ぎたいのだろうが、さすがに、先程まで身体のど真ん中に風穴が開いていた者を急かすことはできないらしい。

 俺の魔力も底をつきかけた。凄まじい速さで回復するといえど、やっとまともに立つことができる程度だ。それほどまでに俺の身体は忌々しい弟どもに疲弊させられていた。だが、のんびり休んでいる時間も無い。何しろ黒龍は今ここには呼べないのだ。奴ら兄妹はもう組合へ着いた頃合だろうか。

 俺は、密かに懸念していた一つの要素に触れた。


「ファルマはどこにいる」

 ファルマの魔力が感じ取れない。死んだのか。何をされても死にそうになかったあの小娘が。


「あっち、だよ」

 セイが指差した方向へ俺は感覚を研ぎ澄ませた。一人の、非魔法使いよりも少ない弱った魔力が微かに感じられる。その隣にもう一人。こちらは人間ではない感じの、これも弱った魔力が感じられる。どういうことだ。


「あのねシャドウ、ファルマは……ファルマは、本当はシャドウを追っていった龍は五体いたの。ファルマはシャドウがこの城から出ちゃってすぐ、レジーに向かっていったの。そしたら、龍のうちの三体はファルマに向かっていったの。俺、それを感じてたけど、アルフェイリアさんに貴賓席にいる人たちを頼んだぞ、って任されて……」

 それで向かってきた訳か。あの猪武者、もといアルフェイリア国王様は。

 それでセイは言われるがまま、王の手足とともに、王族や貴族どもを護衛していたと。

 俺が常々、自分の判断で勝手な行動をするなとセイに言っていたことが仇になってしまっていたのか。まだ奴の年で下す判断などたかが知れたものと堅く禁じてしまっていたことが。とんでもない。俺と、アルフェイリアの判断力こそたかが知れたものだったということだ。

 この様子だと、ファルマは相当の重症のはずである。あの龍を三対相手にして耐えられた方が不思議なくらいだったのだから、生きているだけで喜ばしいことだ。副組合長とはいえ、使える魔法使いどもはすべて国へ斡旋してしまった。ファルマの腕前は良い方だといえども、転移してきた相手の魔法使いの腕もまた、半端ではない。本来ならば一対一の対峙が丁度いいくらいなのだ。しかもファルマは幻影魔法使い。そんな直接的な実践は奴の最も苦手とするところ。

 俺はあちこち悲鳴をあげる身体を起こして立ち上がり、ファルマのもとへ向かった。側にいる生き物……おそらく残りの龍、も気になるところだ。セイとヘルゼが黙ってついてくる。


「ヘルゼではないが……俺からも城を任せたぞ、ウィスパ」

「はい」

「こういう時にはどういった行動を取るよう、アルフェイリアに言われている?」

「身体の安全はもとより、心の安全です。人心の安定に努めます」

 こんな寝首をかかれるような奇襲はたまったものではない。こんな国はもうまっぴらだと、貴族たちがルヴァオールを見限ってレヴァノイアにつく可能性がある。財源の源でもあるそいつらは、ル・ルヴァオールの自由な商業制度を好んでこちらへ味方しているのだ。だが、いくら金があったとしても、命あってのものだねだ。余程の物好きでない限りは、安全と富を選ぶとしたら安全を選ぶに決まっている。レヴァノイアでも、ある程度の資産は築けるのだ。

 ふらつく身体を奮い立たせながら、俺は早足でファルマの下へ急いだ。あの問題が起こった場所よりもずっと下の位置にファルマはいた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 10:22 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その48

サイトで一気に見るならこちら






「シャドウ、ごめんなさい……」

 先ほどからそれを引き抜こうと挑戦しているセイのその努力は褒められるべきことだが、その度に俺に俺の身体にはいちいち激痛が走る。自らに常に課す鍛錬のため痛みにはある程度慣れているといえど、流石にその激痛には耐えられるものではなく、俺が少し顔を強張らせていたのが原因だろう、セイは申しわけなさそうに項垂れた。よく見ると、また涙をこぼしている。最近は以前のようにわめかなくなったと思った途端、これだ。


「慌てても、できんものはできん。謝っても、泣いてもだ。分かるか、俺は泣くなと言っている」

「……うん」

 セイがうなずいたのを見ずに、俺は先ほどからずっと……あの映像を見せられてからずっと黙り込んでいるヘルゼに向かって話した。


「ヘルゼよ、無意味かもしれんが、俺はお前を魔法組合に連れて行こうと思っている」

「分かりました。……今、私がすべきことは、王の御姿を確認することではない、ビビ様の指示を一刻も早く仰ぐことです。シャドウ殿、貴殿に責任は恐らくはないのでしょう。だがしかし、それを分かっていてもなお、貴殿を恨んでもよろしいか」

「それはお前の自由だ。俺の許可を得る必要などないだろう」

「この城は……」

「マスター! マスター、ご無事ですか!? 国王は!?」

 次から次へとやかましい。もう視界が途切れる程に衰弱した俺の身体では反応しきれない。


「ウィスパ……か、お前も何をしていた……、まさか本気でアルフェイリアの命がレジーの手にあると信じていた訳でもあるまい」

「マスター、私どもは王の命令無しには何もできないものなのです。そして、例え王が自らの命を危険に晒そうとも、王から自分を助けるなという命を受けたからには何もできないものです。また、そんな不届きなことはしてはならない。私どもは、王の従順な手駒であることを最大の誇りとし、また誉れとする。そういう者たちなのです」

「なるほど、アルフェイリアの性格を考慮するに、役に立たん連中という訳か」

 どんな馬鹿な命令でも、どんな賢い命令でも、同じ命令として扱わなければならない。ある意味で都合よく、そして不都合な奴らだ。王の手足とは成るほどよく言ったものだ。手足は頭からの命令が無ければ何もできない。頭とはすなわち国王アルフェイリア・グロスヴァンド。今、生死の境目に立つ、愚かな……俺と同じく愚かな主。

 ウィスパは急に俺の後ろに屈み込み、いつも通りの俺の暴言を真に受けつつも続けた。


「ええ。しかし、こうも命令を受けております。貴方にもしものことがあった場合、最大の援助をしろと。マスター、少し失礼致します」

 言いながらウィスパは俺に突き刺さった剣の柄を掴んだ。俺の背に電流が走る。声は出さなかったが、直に内臓をえぐられているのだ、言わずもがな、ひどい痛みだ。


「俺に拒む権利は」

「ありませんな。これも何度も言ったことですが私の主はマスター、貴方ではありません」

 分かりきった自明の質問を答え終わった後、先ほどよりも大きな衝撃が俺の身体に走った。一気に剣は引き抜かれ、俺の血を少しひっぱっていきながらカランコロンと金属音を立てて地面に転がり落ちた。剣にこびりついた血は、すぐに俺の下へと戻ってきた。

 その様子をやはり気をとられてしまっていたのだろう、まじまじと見ていたヘルゼがウィスパに告げた。


「ウィスパ殿。城を……城を頼みます」

「もとより。主より優先順位を決められております。まずは、この国の民。次に魔法組合の者たち、そして、城。幸いにして民への被害は、私ども王の手足と、衛兵、その他魔法使いどもにより、最小限に済んだと思います。そして今、マスターを助けることができた。この人はもう大丈夫でしょう、後は勝手に治ると思います、プライドの方はともかく。そして……城ですが、これより半数をここに待機させ、主の帰還を待とうと思います。残り半分ですが、セイくん」

「……うん……、やっぱり、外の軍隊は、魔法組合の方へ向かってきてるよ」

 俺をさらりとこの人呼ばわりしたことがどうでも良いことと分類されてしまう程の情報が伝わってきた。


「城と魔法組合……両方ぶっつぶそうという魂胆か」

「先ほど、関所からの魔法具での連絡が入りました。北へ向かったようです」

「くっ……」

 完全に南下すると思っていたのに。またもや俺の予想の裏をかかれた。奴らは兵糧をどこで得るつもりなのだ。いや、それよりも、もう魔法組合の補強工事は完全に済んだのだ、内部に直接転移魔法をするようでもなく、直接五万の軍隊を率いてどうするつもりだ。

 魔法組合は、この城に比べてしまえば圧倒的に狭い。それにより、より強固な防御体制を常にとることができる。魔法による全面的なバリアは、転移魔法すら遮断する。無理にこじ開けようとすれば適ってしまうが、ただでさえ超級の難易度を誇る転移魔法をさらに難しくするものだ。あの魔法組合のバリアは、俺がわざわざ一つ一つ念入りにかけてやったもの。その効力は保障してよいはずだ。何しろ、あの組合に外部から幻影魔法をかけることすら難しいのだ。ましてや、転移魔法などと……もう、そんなことをやってのける者がいたとしたら、俺は、俺はそいつを同じ大地に住む生物として認めない。そんなことができてしまう者は、神話にすら、前の魔法組合長すらできないようなことをやってのける者は、いてはならないのだ。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 10:19 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その47

サイトで一気に見るならこちら






 言い終わるや否や、目の前で青ざめた顔で吐血するレジー。どうせその血はその身体へと戻っていくだろうが、感じているらしき痛みは本物のはずだ。幻覚ではない。

 待っていろ、すぐに息の根を止めてやるぞ我が愛する弟よ。何をしてでも。

 身体がぐったりと重くなっていく。今の魔法を放った大きな疲労感に加えて、俺を貫く剣が俺の身体の機能を停止させようとしている。だが俺の心の奥には達成感が沸々と湧き上がってきていた。だが、現実の残酷さを告げるかのように、そのほんの一瞬の嬉しさはすぐにかき消された。感じた覚えのある魔力。空間転移の魔法だ。

 ここまでやっておいて、逃げられるというのか。今度は身体の方が言うことを聞いてくれなかった。今の魔法と、身体を貫く金属の重みが強すぎる。力なく俺はその場にしゃがみこんだ。


「兄上、それではまた」

 平然とした顔を装って、レジーは別れの挨拶を告げるとともに消えた。周りの魔法使いたちも。既に死んだ者だけが、その亡骸を無残にも残して。


「シャドウ!」

 セイがその小さな身体で、俺に後ろから突き刺さった剣を抜こうとした。レジーの剣。俺の杖は俺の自慢する優れた物であるが、この剣の優秀さもまた、特筆すべきものだ。

 俺がレジーを殺そうと、五つ頭の蛇を生み出すあの魔法を創り出す結論へ辿り着いたというならば、レジーはおそらく俺を殺すために、この剣を鍛えぬいた。俺の鳩尾を完全に貫通している、単純な構造の真っ白い剣。もしこれが心の臓のど真ん中を貫いていたならば、俺は今生きていないかもしれない。不老不死の看板を下ろさなければならなかったかもしれないのだ。幸いにして、俺を呼んだ……ヘルゼの声を聞いた途端に感じた違和感を察知し、身体を僅かに動かしたために、今動けない程度で済んでいるのだが。


「シャドウ殿、ご無事ですか……。どうやら、私の貴殿を呼ぶ声が、引き金となっていたようですな」

 ヘルゼが、自分に架された拘束の魔法が、その使用者が死んだことによって開放されたのだろう、自由の身となってこちらへ歩み寄ってきた。アルフェイリアはどうした、という言葉を押し殺して出した俺への心配もまた、奴の本音であろう。奴もまた、俺の負った傷に対する責任を感じているのだろう。アルフェイリアに対するこの俺のように。

 それはささやかな幻影魔法だった。身動きのとれぬレジーがかろうじて出した、ささやかなものだ。俺が警戒する範囲を超えた場所にヘルゼを、おそらくは今し方セイか俺が殺した魔法使いに拘束させておいて放置したのだろう。奴の下に、あの剣を潜ませて。そしてささやかな仕掛けを施したのだ。ヘルゼの『シャドウ』という言葉をトリガーとして、俺の心臓へその剣が真っ直ぐ向かってくるように。さすがに、俺はヘルゼが拘束されていたところまで遠くのことは把握しちゃいなかった。誰かのある一定の言葉を合図とした魔法の始動のロジックは後でじっくり考えればすぐに分かりそうなものだが、止めどなく流れては俺の身体にもどる血のせいで、複雑高度な魔法の仕組みを頭の中で構築するまでには思考が上手く働かなかった。


「貴殿が見える限界の位置に、私を置いたようです。私が、貴殿なら王の行方を、安否を知っているだろうと、貴殿を散々に捜し求めていたことを重々承知しているようでした。彼らの言葉、王の命を握っているなどという不届きな言葉は、俄かには信じがたい。しかし貴殿のように、現実に不老不死までやってのける者が実在することは確かなのです。皆、半信半疑ながらも、嘘だと決め付けることができないようでした」

 奴は初めは俺への言い訳、状況説明を行っているようだったが、次第に話す内容が真に気にかかっていることへと、アルフェイリアの事へと話題が転換されていく様子が手に取るようにわかった。勿論、気にかからないはずがないだろう。アルフェイリアがまだガキだった頃からよく奴のことを知っていたこいつのことだ、主君と家来以上の何かがそこに存在している。

 ヘルゼの視線は、俺の剣が突き刺さりっぱなしの鳩尾にうつりながらも、強く俺を捉えていた。やはり、どうしても目移りしてしまうらしい。そうだろうな、これは。自分で見てもいささかグロテスクだ。


「……これ抜いたら、シャドウ、死んじゃわないよね?」

「そんな馬鹿なことがあるものか」

 俺の尋常ではない様子に、セイの勘が働いてしまったらしい。実際は危なかったところだったが、勿論そんなことは間違っても口に出さない。


「隠したところで無駄だろう。魔法組合長として、同盟国宰相に告げる。お前の主君は死んではいない。だが、もう二度と主君としての役目は果たせんだろう」

「それは……同じことではないのですか」

「そうかもしれんな」

「ビビ様は」

「全く無事にしている。ビビを庇ってそうなった」

「……国王、どうして貴方は!! 昔からずっと! 自分の立場を理解してくださらない!!」

 目にあふれんばかりの涙を流しながら、ヘルゼは地面に突っ伏して続けた。想像が容易すぎたのだろう。アルフェイリアの性格を嫌というほど理解していたために。


「口をすっぱくして申し上げたのに!! それは愚かな主君のすること!! 愚かな国王!!」

 兄妹の情。俺の知る限り、どこにでもいる凡人ならばそれは微笑ましきもので、むしろ推奨されるべきものだ。だが、こと国を統治する者とあっては、時には邪魔となってしまう。美しいはずである兄妹愛が、国を、数え切れないほどの国民を谷底へ突き落とすことすらあるのだ。


「シャドウ殿!! それで貴方は何をしておられた!! 仮にも貴方は魔法組合長!! 唯一我が君と対等に扱われる立場にあられる、魔法の第一人者ですぞ!!」

 それは当然のことだ。向こうにしてみれば、レジーら魔法使いどもの突如の出現とともに、俺とアルフェイリア・ビビ兄妹が姿を同時にくらましてしまったのだから、その疑問が出るのも無理はないし、実際俺の責任が大分からんでいる。ほとんど俺のせいと、言ってしまってよいのかもしれない。

 またおしよせた自己嫌悪の波、何より己の想定外の行動をされたことに対する憤りで、自分の身体が余計に重くなったように感じる。


「俺の言葉では、余計な混乱を招くかもしれん、実際に見てもらおう」

「シャドウ、無理しちゃだめ! シャドウの魔力、もう、もうっ、全然のこってない! もうがたがたなんだよ!」

 俺がヘルゼにかけようとした幻影魔法。相手の目を欺くそれは、時に意志伝達方法として重用される。百聞は一見にしかずということだ。幻覚でしかないが、幻影魔法に対抗することのできない非魔法使いの者にはそれはそれは鮮明に移ることであろう。そのための魔法は決して困難なものでもないし、普段の俺ならばこんな心配をされるべくもない。


「シャドウの嘘つき! そんな無駄な使い方するなって、いつも言ってたじゃん! ばか!!」

 セイの言葉は本当のことだ。だが、俺はそれを振り切ってヘルゼにあの、アルフェイリアが脇道からビビを庇うように飛び出し、レジーの生み出した蛇を直接くらって吹っ飛んだというあの惨劇を見せた。その一部始終を、口で言えやしない。それが俺の本音だった。

 セイの声は、俺の集中を妨げる要素にはなりえず、ヘルゼには、俺がアルフェイリアから蛇を取り出すことに失敗した様までその全てを見せた。見せ終わった後、俺は暗くなりかけている視界をもう一度とらえた。頭の中で、これまでの出来事が整理されていく。奴らが転移魔法でこの城に突然現れたことから、レジーが今度は俺の出した蛇を喰らいながらも、俺を剣で貫いて去ったことまで。石造りの通路の床がやたら冷たく感じる。もともとの俺の体温の低さもあるだろうが。

 俺の疲弊しきった今の力ではこの剣は抜けそうになかった。剣を己の身体の一部とすらも思いながらも、その場で座り込むことぐらいのことしかできない。あの蛇のように、生気そのもの、つまり魔力の根源そのものを奪っていくため、不老不死の身体がそれを修復しようと再生する力を上回って俺の力を奪っていくために、時が解決してくれる訳でもなく。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 10:14 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その46

サイトで一気に見るならこちら






 城へ辿り着いた。式典上の最上階へ飛来する。その直前で乗っていた龍の首を胴体から切り離した。後の禍根を断つために。頭の無くなった身体は、一瞬ぴくりとふるえ、そのまま落下していった。

 俺が城へ着く前から奴らの動きは慌しくなっていた。レジーの元へ何人かかけこんだようで、レジーの傍に控える魔法使いの数が増えている。庇うつもりか。それもそのはずだ。あんな強大な魔法を放っておいて、平然といられるはずがない。三つ頭は、奴の限界だろう。ファルマやセイとて、今の段階では例えどんなに踏ん張ろうとも一つの頭も出せまい。

 ふと、俺はこの会場の可笑しな動きに気づいた。レジーが重症。俺が不在だとて条件は同じ、どちらも組合長を欠いた状態だ。ならば空間転移してきた魔法使いには限りがある。俺とレジー、それぞれの魔法組合の組合長を省いたとしてもこちらの方が若干戦力でいえば勝っているはずだ。なぜ袋叩きにしてしまわないのだ。俺にまた沸き立つ嫌な予感、これ以上どんな嫌なことがあるというのだ。

 不安を胸に、俺は黙ってレジーの元へと向かう。レジーの位置は、俺たちに向かってあの化け物を放った場所からそう離れてはいなかった。全速力で向かう途中、横道からセイが現れ、半泣きの状態で俺の背にしがみついた。


「シャドウ、シャドウ、うわあああん、しゃどぉぉおお!! 俺も行く!」

 振り返らず、セイの方を向かずに俺は叫んだ。


「どうして奴を今まで討ち取らなかった! 絶好の機会だぞ!」

「だって、だって、アルフェイリア国王の命は僕の手にあるって、言うんだもんっ。嘘だよね、嘘だよね!?」

 ある意味で間違ってはいないが、奴の意志一つでアリルフェイリアの命を落とせたり落とせなかったりする訳ではない。


「そうか。そんな世迷言を……、それで何を要求してきた。この城の譲渡か!」

「うっ、うん。ううう、初めはいろいろごちゃごちゃしてて、あちこちで戦っていたの。でも、今はっ、今はもうほとんどの人が知ってる! それで、それでヘルゼさんが……」

 あの国の重要人物、苦労人らしき雰囲気を纏ったじじいがどうしたというのだ。死んだのか。


「交渉しにいったの。つかまってるの」

 どちらの状況だ。だが恐らく、ヘルゼはレジーの言葉をいち早く飲み込み、アルフェイリアの身柄がレジーの下にあるのだと勘違いをしたのだろう。自ら身をのりだし、あわよくば主君を救わんとして勇ましく向かったのだろう。これもまたしても、裏目に出てしまった。

 魔力を探れば人の波は出口へ集まっていた。俺の息のかかった魔法使いたちもそこへ集中している。開城、降伏。あまり認めたくない現実、その急展開ぶりに眩暈がしそうだ。

 だがへし折れている暇も無い。ヘルゼには悪いが、あいつを無視してでもレジーを叩き潰さねばならない。アルフェイリアの命を握ったかのような戯言を、さも真実のようにふりかざすあの愚弟を。

 俺の肩の上で、俺が奴にぶつけてやろうと右手に渾身の魔法弾を蓄えることに呼応して、セイが思いっきり息を吸い込んでいる。セイもまた、全力を込めて日頃の鍛錬の成果を発揮しようとしているのだろう。

 四つ頭の蛇をレジーに食らわせる。だが、先ほどの状況とはまったく違い、俺はレジーのみに当てなければならない。回りに控えているレジーの部下どもに、レジー程の討ち取る価値はない。俺の場合は不幸にして全く逆の話であった。ビビ、アルフェイリア、どちらに当たっていたとしても最悪のシナリオだ。今進行している現実でもあるが。

 ようするに、避けられてはいけないのだ。

 俺の想像とは違って、ハイドとブライはこの城へ転移してはいないようだった。実力からいって、レジーの次に厄介な奴らだ。俺を裏切ったからには、やはり俺に不満があったはずで、一目散に俺の下へ俺を抹殺せんとやってきてもいいはずだったのだが。逆に返り討ちにする機会ではあるが、今そんな邪魔をされては困るので、不幸中の幸いといえよう。

 周りに控えている魔法使いどもは、セイに任せるとしよう。セイは言わずとも分かっているだろう。

 視界の奥にレジーら数人の魔法使いどもを捕らえた瞬間、賢い子悪魔は、俺の思惑通りに俺の肩から飛び跳ね、黒い炎を口から吐き出した。子悪魔と呼ばれる所以でもある、神話のそれらしい攻撃だ。龍の炎より性質の悪い、嫌らしい炎。魔法使いのうち一人が前へ進み出て、ふさぐように炎の広がりを一人で食い止めた。セイの懇親の炎を受け止めるとは、大した魔法使いだ。

 俺は右手に奴にぶつけるためのとっておきの魔法を用意しておき、左手でセイに加勢した。なぎ払うように白い刃をぶつける。名も知らぬ三人の魔法使いがレジーをかばうように前へ出て、協力してあらかじめ暖めていた魔法壁でかろうじて相殺された。セイは低くかがんで俺の出した刃を避けつつ、さらに右手を前に突き出し、レジーのもとへ一本魔法の線を引いた。これももう一人の魔法使いが盾となり、防ぐ。しぶといやつらめ。

 数人が組となって敷かれた鉄壁の防御体制は、さすがに硬い。だが、下からの攻撃には耐えられまい。俺は奴らが防御壁を敷いた後の隙に間髪いれずに、ちょうど下の階を発生源とした黒い柱を、ちょうどレジーがいると思われる真ん中へ貫き建てた。

 俺は幻影解除を怠らずにレジーの姿を捉えた。さすがのお前といえども、疲弊しきっているだろうこの状況で俺を欺くことのできるような幻影魔法はだせまい。レジーが出したとは俄かに信じがたいささやかな幻影魔法はかわいいものだ。だが、それすらも演技の可能性がある。勿論のことだが、油断はできまい。

 そして勿論俺は、下からの奇襲に怯んだ魔法使いたちのその一瞬の隙を見逃すはずもなかった。セイが異常に発達した爪で一番手前の魔法使いの喉を掻っ切った時、俺は空中にわずかに放り出されたレジーだけを見据えて蛇を放った。いけるはずだ、これならば当たる。


「シャドウ殿!」

 俺は無意識に身体を逸らした。誰かの声とともに、俺は俺の身体に違和感を覚えた。視界に入る白い刀身の先端。俺はこの剣に貫かれたのか。


「相変わらず、化け物じみていますね……。本来、魔法はそう連続して放てるものではないはずなんですけどね」

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 10:05 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その45

サイトで一気に見るならこちら






 自分の魔法で飛ぶのも、これまた久しい行為である。あまり褒められたことではない。浮遊魔法も時空魔法の一つ(風の力を利用してとぶ天候魔法の一つでも空を飛ぶことはできるが、こちらは空中制度能力が著しく劣る)。空間転移の魔法には及ぶべくもないが、やはり他の魔法と比べてしまうと難しい部類に入る。魔力の消費も激しい。レジーと対決する場合、また転移され逃げられたとしてもほかの魔法使いに対して、等々様々な魔法を使う場面が来るだろう。魔力を温存するに越したことはない。だが、最早とやかく言っている場合ではない。

 俺の浮遊魔法で出せる速度はやはり龍、ましてや黒龍に比べてしまうと見劣りする。だが、相手もこちらへ向かってきていることもあって、対面は案外早かった。向こうもこちらの魔力を察知してか、準備は万全だと言わんばかりの様子で、視界に捕らえるや否や黒い炎の塊が真っ直ぐ飛んできた。牽制のための魔法ではあるが、優れた龍だ。こちらへ追いつこうと向かってきた者は二体だ。根性が座っているとでも言おうか。魔力を探るに、なかなかに骨のありそうな者たちだ。

 俺はわざと馬鹿正直に向かってきた炎の塊と正面からぶつかった。今度は咄嗟にではない、あらかじめ放たんと用意していた魔法壁だ。強力な龍の炎といえども、こちらに何の被害も与えん程に相殺できる。俺は炎の存在をまるで無視するかのようにそのまま直線状に、向かって近いほうの龍へと一目散に向かった。背に乗る魔法使いに、一瞬だが怯みが見えた。そのせいか、俺に向かって放つ魔法が一瞬送れたのだろう、俺はすぐさま用意していた魔法の刃で龍の首ごと、放とうとしていた魔法ごと、肌身離さず持っていた、俺の魔法でより切れ味を高めた俺の杖で縦に真っ二つに切り裂いた。奴のあげていた悲鳴は喉も真っ二つに割れたせいか、可笑しな形で途切れた。

 一瞬の沈黙を経て、そのまま地上へと落下していくであろう龍と背に乗っていた魔法使いを俺は見ることもせず、間髪いれずに二体目へと向かおうとした瞬間、俺が一体目と対峙している間にもう怯みを通り越していたのか、溜めに溜めたらしき白い魔法弾が俺の視界を占領した。でかい。避けさせないための処置だろう。浮遊魔法は余程慣れていない限り咄嗟の身動きが取りづらい。それを見越して放ってきた相手の懇親の一撃。よかろう、ならば避けん。これも正面からぶつかってやろう。

 それは相手側の魔法使いの精一杯の攻撃だろう。だが、俺はこういった真っ向勝負こそを得意としている。いかに早く短期間で強力な魔法を放つか。俺はある意味そこに特化しているといえる。ようするに、望むところだ。

 俺の放った、奴に似せた白い魔法弾は奴の魔法弾を粉砕し、それでも力を持て余して奴へ向かった。俺も自分の放った魔法弾の影に隠れながらその魔法使いへと向かう。

 敵の魔法使いを乗せた鈍い赤の龍が軽く上昇した。魔法弾の純粋なぶつかり合いという隙の中でも急な動きに耐えられるよう準備をしていたのだろう、そうした動きで魔法弾を避けた。

 俺は魔法使いの脇腹を思い切り蹴りとばし、地上に突き落とした。蹴飛ばされた魔法使いはなんの構えもしておらず、情けない悲鳴をあげて真っ逆さまに落下していった。それもそのはず、魔法弾の後ろに隠れていた俺は幻影魔法による幻覚だ。切羽詰った場面こそ、幻影魔法は効果覿面だ。大抵こういう直接的な魔法使いどもは、幻影魔法を不得手としている。そのため、奴らは幻影魔法を使ってはいたのだろうが、俺は常にそれを見破るよう目を凝らしている俺には、奴ら程度の腕の幻影術は通用しない。一方でレジーには劣ってしまうが、俺も幻影魔法は得意な部類に入る。そうおいそれと俺の幻影魔法は見破られるものではない。

 主のいなくなった龍の背にまたがり、手綱を強引に引っ張る。分かりきっている抵抗を防ぐためだ。数秒間、そのまま引っ張り続け、息もできぬような状態にさせておく。そして開放したと思わせておいて、俺は龍の後頭部に手を置いた。強めの電流を放つ。龍の皮膚は硬い、これぐらいでもせんと、やつの皮膚は突き破れはしない。

 龍は本来自由気ままな生き物。認めた者に従うことはあれど、その者に落胆したとあれば途端に態度を翻す。今分捕ったこの龍の態度からいって、プライドは高めの方であろう。ならばこちらが上であることを認めさせるために、強引な手段を取ることが好ましい。一度龍のプライドを砕いてやるのだ。この手の龍は、従わせれば強力な走り屋となってくれるはずだ。

 十秒ほど電撃を浴びたであろうか、ほどなくして龍の魔力が抵抗の色を失った。経験から分かる魔力の感情。勿論細かく分析することはできないが、こちらに敵対するかそうでないかを見分けるには充分だ。


「城へ戻れ。全力でだ」

 俺の言葉に従うことに決めたらしい。向きを反転させ、持てる力の限りを出し絞るように城へと引き返した。早い。だが、やはり黒龍の全速力と比べてしまうと遅く感じる。身体全体にうける身を切り裂かんばかりのあの風の力が弱い。

 龍は失ったプライドを取り戻すためか、今度は自分の力を誇示するように速度を出し続けている。そのつもりでやったのだから、有難いことだ。残念だが、俺が黒龍からお前に乗り換えることなど有り得ないことも知らずに。俺自信の誇りを取り戻すことが極めて困難なように、この龍のプライドもまた、取り戻せることはないだろう。


「どうした、レジーに認められた駿龍よ。その程度か」

 俺はわざとらしい煽りを龍に浴びせつつ、気持ちは遠い城へと向いていた。速度を抑えていたと言えど黒龍がしばらく飛び続けた距離だ、到着にはまだ幾分かの時間がかかる。俺は集中し、城にいる奴らの魔力を探った。やはりどう考えても際立って目立つレジーの魔力。そして悲しいかな、俺が城へやってきた時より感じる強力な魔力を持つ魔法使いの数が少なめに感じる。まだ距離を遠く離れているために俺が感じきれていないだけか、奴の手によって殺されたのか。前者であることをただひたすらに祈ろう。セイの魔力も感じ取れた。そうか、無事なようだ。

 一人一人の安否を確認しつつ、俺は向かった。着いたら、すぐにレジーに特攻してやる。やつが逃げ帰るまでにあの化け物の味を確かめさせてやる。四つ頭の蛇。五分の四。俺が出せる限界。奴の生命に止めをさすのに、それで足りるだろうか。だが、少なくとも重症にはなろう。少なくとももう魔法使いとしての活動はさせん。させてなるものか。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 10:00 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その44

サイトで一気に見るならこちら






 俺はゆっくりと細い魔法の刃を生み出した。より繊細で、より力強いものが望まれている。五本の刃から形成されたそれに、俺は全ての望みをかけて、アルフェイリアの心臓深く突き刺した。

 見るのも辛い、アルフェイリアの苦しく呻く顔が一瞬その衝撃に反応して眉を動かした。

 するすると奴の体内を我が物顔で蠢く、傲慢な化け物は、すっかり気に入ったらしいその場所に進入した異物に反応して、不規則な動きを見せる。

 その魔法は、俺の知る限りでは、少しずつ対象者の身体と一体化し全体から生気を奪っていき、最終的には死に至らしめるものだ。その化け物の位置が特定できるということは、まだ取り出せるチャンスがあるということだ。本来ならば、ものの数秒で本人と一体化してしまうのだが、レジーの甘さに俺は助けられたということだ。あとは、俺が先ほどまで奴に念入りにかけていた保護魔法が一体化の動きを鈍らせている。処置が長引くほどに手遅れになりやすいと言った言葉の意味はここにある。

 目を閉じた。俺の全神経が、その怪物の一つの頭に集中する。捕らえきれないと思わせる複雑な動きに慣れ、少しずつ捉えることができてきた。俺がまず狙いを定めた頭はアルフェイリアの呻き声とともに、ぴくりと動きを一瞬鈍らせた。今だ。

 決して遠くもない、近くも無い場所でいつでも動けるように待機していた刃が全速力で一匹目をとらえた。頭ごとに分かれて移動し始めた化け物の身体。まずは一つ目。俺は捕らえた蛇の頭を瞬間的に切り刻んだ。魔法の屑が奴の身体に残るが、問題は無い。

 その動きに驚いたのか、他の二つの頭の動きも止まった。好機といわんばかりに続けざまに二匹目をとらえた。すかさず切り裂こう……とした途端。


「伏せるんだっ」

 ビビの大声。炎の玉が頭上を飛び交った。形状的に人間の魔法ではない。龍のものだ。黒龍の後を追って、三匹の龍がやってきていた。


「くっ、……」

 一瞬意識をそちらに奪われた。

 無意識的に刃が捕らえていた蛇を消し去っていたはいいものの、最後の一匹の頭の場所が特定できなくなっていた。まさか……まさか。

 実際に過去、この魔法を受けた者が死に至るまでの様子を観察したことなどはない。俺はそこまで悪趣味ではない。だから詳しいことはわからないが、一体化とは、こんなにも一瞬で行われるものなのか。間に合わなかったというのか。

 俺の絶望とは裏腹に、俺の身体はアルフェイリアを冷静に仮死状態にしていた。もう手遅れだと、全身が訴えている。今の一瞬が全てであったのだと。

 アルフェイリアは全ての動きを、生命の活動すら止めて、寝ているのか死んでいるのか判断のしかねる表情のまま、ただ黒龍の背中に揺られ続けていた。

 気兼ねなく作業に集中できるよう、黒龍は飛行の早さをある程度留めていたのだろう。追ってきた龍どもも優れた駿龍であったとはいえ、俺の相棒ともいえるこいつが他の龍なんぞに追いつかれることなど、あるはずもないのに。

 黒龍に八つ当たりなぞしている、情けない自分は今どこの何者だ。そもそも魔法使いと名乗ることすら、おこがましいと感じてきた。黒龍はそんな俺のつまらん八つ当たりなどは露知らず、俺が集中できるよう落としていた速度を元に戻した。途端に引き離される追跡者ども。

 一匹逃した。たとえ一つの頭でも、生身の人間を死に至らしめるには充分すぎる程の威力がある。そして、たった今アルフェイリアは生死の境目に立った。ル・ルヴァオールは、知らぬうちに絶対的な指導者を失ったのだ。

 ル・ルヴァオールの民にとって、いかにアルフェイリアという存在が重要であったのか。魔法組合のように、おいそれと頂点の座に立つ者を変えられるものではない。不敗神話を持つ奴が倒れたというだけで、もうレヴァノイアの勝機は充分である気がする。将を失った軍は脆い。主君を失った国は、もっと脆いものだろう。


「一つ、頭を逃した。それで、仮死状態にした……。三匹を含めた状態で仮死状態にするよりはまだましだったろうが、もう……取り出す望みは、ない……少なくとも俺の腕では、できない……」

 一体化した身体から、蛇を取り出す行為。そしてその最中、アルフェイリアの生命を保つこと。いくらなんでも、こんなことは前の組合長ですらも、無理だったであろう。


「おいらの声……」

「関係ない。どのみち声を上げなければ俺に直接当たっていた。そんな事態になっていれば今よりも残念な結果となっていたろう」

「……アルフェ……」

「どうやら俺が思っていたよりも、俺は未熟なようだ。これからはお前の指示を仰ごう……。雇い主と雇用側になったつもりでな。だがその前に一つ、我侭を許せ」

 俺の、くだけちった誇りとか何かそういったくだらないものの破片が、まだ叫んでいた。


「何するんだい」

 本来ならばビビは、唯一の肉親を失った者として涙の一つでも流し、俺を罵倒し、おいらの指示を仰ぐう? じゃあアルフェイリアの代わりに死ねよなどと叫んでいても可笑しくはないはずだ。それをさせないのは、ルヴァオールを必然的に背負うことになる奴の立場がさせるのか、それとも従来の性格なのか。


「お前とアルフェイリアは、このままこの龍に乗り、俺の組合を目指してもらう。そこでアルフェイリアをとりあえず安全な場所へ、そうだな……俺の部屋を使うといい。そこで安静にさせておいて欲しい。俺はこのまま戻り、レジーの元へ向かう」

「でも、レジーは倒せないんでしょ」

「殺すことはできなくとも……少なくとも、二度とあの魔法は放たせん。どのみち奴を放っておくわけにはいかないだろう。俺の部下にも指示を出す」

「うん、わかった。でも、いきなり現れるんだから、消えることはできないの?」

「帰りの魔力だと!? あれだけの転移魔法を発動しておいて、さらにだと!」

 考えたくもない。考えたくも無いが、そもそもがあり得るはずのないと思っていたあれだけの人数の転移を実現させてしまっているのだ。考慮に入れればなるまい。

 相手側にそれだけのことをやってのけてしまう魔法使いがいるとなると、俺にどう立ち向かえというのだ。途端に、ルヴァオールの勝利、そしてこの魔法組合の魔法使いとしての戦力が上なのだという自信が揺らいでくる。時空魔法だ。時空魔法に、勝てるはずもない。

 だが、何故今の今まで現れなかったのか。それ程の腕を持ちながら。今まで何度かレジーの魔法組合とは小競り合いをしてきた。相手側の魔法使いに、そこまでの者はいなかった。魔法組合の者ではないのか? そこまで考えて、俺は一つの有力な説に辿り着いた。


「お前の婚約者だが……ビビ」

「もう一人のセイくんのことかい。あの人の魔法なの?」

「分からん。が、可能性は高いだろう」

「あの人の力、とにかくすごいんだってことは聞いたことあるよ」

 とにかくすごい。曖昧過ぎて図りかねる。勿論俺もレヴァノイアの国王代理の魔法使いとしての優秀さは聞いている。だが噂は膨らむもの。多少優秀な程度であろうと済ませてきたのだが、噂では足りない程の優秀さであったということか。


「おいらとの結婚、なかったことになるのかな」

 ビビの心は、もしかすると傾きかけているのかもしれない。だとすれば、俺がこれからやろうとしているレジーへの殴りこみは逆効果となってしまう。しかし。


「お前が止めても、俺はいくかもしれん」

「んーん。いいのだ。おいらだったら、ぼこぼこにするもん」

 俺は浮遊魔法の準備をした。無論城まで飛ぶには燃費が悪すぎる。追ってくる龍どもを狩ろうではないか。


「ビビ、……すまん」

 何年ぶりに心から謝るということをしたのだろう。ビビの反応を待たずに俺は黒龍の背から飛び降りた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 09:58 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その43

ここからシャドウ1いじめはじまるよー!
サイトで一気に見るならこちら







 一秒。俺の頭は何も考えることができず、完全に停止した。短い時間だが、十分に長い時間だ。

 目が覚めて、俺はレジーを一瞬睨み付けた。あのような強大な魔法を放ったのだ、流石の奴も疲弊しているようだが、構っている暇はない。

 俺は無言で奴ら兄妹を追いかけた。魔法使いでもない者が、何も持たずに外へ飛び出してどうするというのだ。

 俺は胸元に密かにぶらさげていた拙い銀の十字のアクセサリに願をかけた。久々だ。今こそ頼る時。

 下を見れば人形のように動かず、まっ逆さまに落ちるアルフェイリアと、それを真っ直ぐに追いかけるビビの姿が見える。そしてその下にあらわれる黒い影。それこそが俺が呼んだもの。

 俺の長年の相棒ともいえる、真っ黒のボディを持つ、名も無きドラゴン。一般的に黒龍と呼ばれる奴との久々の再会を、本来ならば喜ぶべきなのだが、俺にその余裕はまったくなかった。

 黒龍は上昇し、アルフェイリアを、ビビをそのまま受け止め、余った首元に俺を誘った。


「そのまま俺の組合へ飛べっ。全速力だ。ただしこちらに衝撃を与えるような動きはしてくれるな」

 レジーの視線が、レジーを直接見た訳でもないのに俺の背中に刺さったのが分かった。どういうことだ、何であいつがあれを使えるんだ。だが今はそれを考えている暇はない。アルフェイリアだ。

 ビビは黙って奴を龍の背骨に添って寝かせ、ごつごつした龍の背の上でもなるべく安静な姿勢を取れるようにと工夫をした。

 俺は無言で奴の心臓があると思わしき場所に服の上から手を当てた。すでにアルフェイリアの顔色は青ざめることを通り越して土気色だ。まずい、どころではない。

 おれの手の下、アルフェイリアの心の臓で、不規則な奴の鼓動と、その原因ともなっている問題の蛇が蠢いている。息をしているのかしていないのか、耳を澄ましても分かりかねるくらいの奴の微かな呼吸が、奴の頼りない命を繋いでいた。


「ビビ」

「あれ、何の魔法なんだい」

「今から軽く説明する。詳しい話は後でになる。だがそれよりも、お前に選択させたい」

 ビビは黙った。龍の恐ろしいスピードを受けて、髪がばたばたなびいている。風ーの抵抗のための保護魔法は咄嗟にかけたが、その対象はアルフェイリアのみだ。

 了承と取り、俺は続けた。


「あの魔法をもしレジーが完璧に習得していたら、俺には何の手も打ちようがない」

「死だね」

「ああ。だが、あの魔法の完成形は五つ頭の蛇になるはずだ」

「……まだ、助かるってこと?」

「かもしれん。……このかもしれん、にどれだけの望みがあるのかはっきり言おう。一割以下だ。もともとあの魔法は俺が編み出した魔法だ。俺やレジーのような、所謂不老不死の者を殺すために生み出したもの。俺が、レジーを完全に倒すためにかなり前に生み出したものだ」

「それが、生身の人、アルフェとかに当たったから、まずいんだね」

「だが、あの形を見るに未完成だ。それでも、俺ですらも当たったら危ないものだろう。今から、……今、これから行う行為に耐えれるよう、アルフェイリアの生命を保つよう保護魔法をかけている。それが完全に終わったら、直接蛇の頭を掴みひきずりだすか、それとも仮死状態にするか、どちらかの選択を……選んでくれ」

「もっと詳しく話して。君がレジーを倒しても、無理なのかい?」

「奴が、完全な死を迎えたなら助かるだろう。アルフェイリアにかかった毒牙は完全に抜ける。だがそれは難しい。俺は先ほどの魔法を、あの蛇は四つ頭まで出せる。それをレジーに当てるか……当てたとしても、完全な死に至るかどうかはわからない」

 自分で開発した魔法なのだ。あの魔法の恐ろしさなら誰よりも深く知っているはずだ。この襲い来る絶望感が、俺の意志を奪う。


「一つは今、こいつの心臓に巣食い、内部からアルフェイリアを貪り食おうとしている化け物を直接魔法で掴み取り、引きずり出す。成功したら問題なく助かるだろう。だが失敗したら、あるいはその魔法を行っている最中にアルフェイリアの体力が尽きたら、死ぬ」

「もういっこは?」

「この魔法は、生命力を食うものだ。故にアルフェイリアを仮死状態にすれば、蛇の牙は対象を失い、奴の体内で彷徨う。それでも完全に死んだ訳ではなく、一度巣食った者から決して離れはしないが、少なくとも、死ぬことからは逃れられる。だが、どのみち取り除く方法がなければ、寝たきりになる。また時間が経てば経つほど後から取り除くのも難しくなる。その代わり、強大な魔方陣の補佐をつけることによる新たな可能性が出てくるかもしれん」

「仮死状態のまま取り出すのは? だめなの?」

「これは、蛇どもがアルフェイリアの生命を貪り食い、夢中になっている隙を狙うからこそ成功する……。仮死状態ではとてもじゃないが無理だ。後で行うにしても、どのみち仮死状態を解除する必要がある」

「わかった。いいよ、やって」

 ビビの性格を知ってはいたつもりだったが、それにしても即断すぎた。迷う余地など欠片もなかったのだろう。

 話すべきことを大体話し終えて、俺の心は少し落ち着いたのか、やっと来るはずの後悔が押し寄せてきた。

 俺の魔法使いとしての誇りは、既に粉々に砕け散っている。何が魔法組合長か。馬鹿らしい。もう自分の言葉一つ一つにすら自信を持てず、いつも平然と負っていた責任でさえも今なら重く感じるだろう。医療としての魔法も経験しているのだ、人の命を救うか失うかの責任は何度か負ったことがあるし、それ以上に人を殺した。このことに対して思うところは他の奴らよりもずっと少ないし、今でもそう重く捉えてはいないが……。今対象としている人物がこの国の最重要人物だということを除いても、俺は多分、今緊張している。


「頑張れ、魔法組合長くん」

「……失敗したら、思いっきり恨め。俺を兄の、アルフェイリアの仇として見ろ」

 そうでなくとも、この魔法であったこと、放った人物が俺の弟であったことを考えれば、例え結果が成功であったとしても、俺を恨むべきだ。指導者を失った、主のいない城は今頃、すき放題に荒らされて滅茶苦茶になっているだろう。想像したくない。予想外すぎるとはいえ、今回の件は完全に俺の落ち度。空間転移の魔法……あれ程の使い手が、この世にいていいと言うのか。時空魔法においては前の組合長よりも優れているかもしれない。大体、アルフェイリアの接近になぜ気づかなかったのか。気付いていたとしても、ビビが代わりにこの魔法を受けていたでだろうが……。

 もしや、前の組合長が放った転移魔法ではあるまいか。いや、ありえない。奴はどちらの味方をするでもなく、ただぼうっと組合長としての地位に甘んじていただけだ。


「とう!」

 不意に、俺の背中に衝撃が走った。ビビが俺の背中を思い切り叩いたようだ。視界は目の前の現実へと、まるで生気のない、ほとんど動けずに龍の生み出す微かな振動に任せたまま揺れるアルフェイリアの大きな身体が横たわっている危機的状況へと移った。


「がんばるのだ!」

 不安からくる俺の雑念を察したビビの行為は、奴の思惑通り俺に踏ん切りをつけさせた。

 俺の持てる、俺の拠り所とする魔力と集中力をもって、最善を尽くすのみ。簡単な話ではないか。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 01:37 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その42

まあそういうことです
サイトで一気に見るならこちら






 無論、考えるまでもなく、レジーの行動はそれを見越してのものなのだろう。グロスヴァンド兄妹の絆の深さなぞ、情報収集が得意なレヴァノイアが知らないはずがない。

 何としてでもレジーより早く二人のもとへ。俺の願いは、用意周到なこの城の精密な地図によって助けられた。俺とレジーの目的地への距離の、開始時点の激しい差を地図は埋め合わせてくれた。全くもって、奴ら兄妹の賭けは大成功だと言える。


「ファルマ! 下がれ!」

 ファルマの姿を確認するや否や俺は叫んだ。応接間近くの入り組んだ場所の少し眺めの廊下に二人はいた。レジーよりも早く俺と合流するために、ビビとファルマが示しあってか辿り着いた場所だ。おそらくはレジーらがこの城へ転移してこなければ、見晴らしの利く屋上へ移動するつもりであったのだろう。何が起ころうとも融通の利く場所でまったりと過ごそうとしていたつもりであったのだろうが、裏目に出てしまった。


「しゃど……、う」

 ファルマが維持している咄嗟の防御膜越しにレジーが見えた。俺の背筋に震えが走った。

 完璧な壁を維持しながら突撃してきた奴の顔が不意に見えた。笑っている、と思いきや、奴の顔は黒い化け物に隠れて見えなくなった。

 その化け物には見覚えがある。

 三つの頭を持った蛇。

 奴の手元から、あらかじめ暖めてあったのだろう放たれた魔法の形。

 それはファルマの広く、決して脆くはないバリアを易々と食い破って襲ってきた。

 俺の思考は停止した。かろうじて俺の手が届く位置にいたファルマの腕をつかみ、後方へ投げ飛ばす。ファルマは驚く暇もなく、俺の手によっていとも簡単に吹っ飛ばされた。

 そして同時に俺は咄嗟に作り出せる最高の制度の魔法壁を出した。数秒の時間稼ぎにしかならないが、その間に前方にいるビビを。俺はビビの腕を掴んだ。ファルマと同じように後方へ投げ飛ばそうとするために。

 あの魔法にだけは、当たってはならない。

 しかし、ビビは俺の意を汲みながらも尚且つ俺の腕をその強力な腕力で振り解いた。魔法壁にほとんどの意識を集中している俺の身体ではそれに対抗できなかった。

 一瞬振り返って見せたビビの表情は、おいらに任せなさい、と言わんばかりの強い表情。

 何を馬鹿な、やめろ、やめてくれ、頼むから下がってくれ……発しようとした言葉は出ず、俺は視線を無意識に目の前に一瞬向けた。絶望を感じながら。魔法壁が食い破られる。

 だが、視界にいるはずの化け物はいなかった。


「ビビーッ!!」

 赤、そして緑。

 聞きなれた声と、鈍い、あまり聞きたくない音がした。それとともに大きなものが俺やビビを飛び越えて吹き飛ばされ、窓をぶち破って外へ飛び出した。ここは屋上近く。かなりの高度のはずだ。

 俺は真っ白になりかけた頭で、その吹き飛んだ者を視線で追った。

 そして俺はまた、あってはならないものを見た。

 ビビは猛烈な勢いで走り、外へ飛び出した。今し方、三つ頭の蛇に、三つ頭の蛇と共に吹き飛ばされた者の名を叫んで、その者の後を追って。


「アルフェーッ!!」

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 01:34 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Successor Of Dragon  その41

四章はじまるよー
急展開……というよりここかが本番。
サイトで一気に見るならこちら






4 三つ頭の蛇


「……!!」

 俺は咄嗟に目の前のガキの額に手を当て、軽い電流を送り気絶させ、全力で駆け出した。

 間違いない。紛れもないこの強力な魔力。レジーだ。そして、レジーだけではない。

 潜伏していたのではない。式典場のどこにいても容易に感じ取れる程の魔力を持った魔法使い達が、一人、また一人と出現している。何も無かった場所から現れている。

 そんな馬鹿なことが許されていいのか。そんな反則的なことが。

 これが、これが合図の内容だったとでも言うのか!?

 考えるまでも、探るまでも無い。これは空間転移の魔法だ。恐らくはルヴァオールの土地へ侵入してきた、五万の先陣がいる場所からの。……この城からの距離は果てしなく遠い。優秀なドラゴンが丸一日飛び続けて、やっと届く距離だ。 

 また一人現れた。これで城へ現れた魔法使いは十人を超えた。そんな場所からの空間転移は、たとえ巨大で精密な魔方陣を使用したとしても、一人をやっと転移させるぐらいが関の山のはずだ……。俺の魔力を持ってしても。

 そして俺の記憶の限りでは、レジーの魔力は俺よりも低かったはずだ。レジーではない。たとえレジーが俺よりも数段上の魔力を隠し持っていたとしても(俺が実力を探れなかった魔法使いなど一人たりともいなかったから尚更あり得ない話だが)、こんな……俺が感じる、城に現れたばかりのレジーの魔力が……こんなに力強いはずはない。これ程の空間転移の魔法を実行して、元気でいやがる訳はないんだ。

 だとすれば誰の魔法か。だがそんなことを考えている暇はなかった。

 俺は一階のフロアに現れた、今俺がいる位置に一番近い魔法使いに突撃した。

 動揺し混乱した思考とは裏腹に、俺の身体はその近くに現れた魔法使いに対して、極めて合理的に動いた。

 他の者へ危害を加えないよう、俺は威嚇のために細い魔力の塊を素早く飛ばした。

 騒ぎ立てる広場の声が、どこか遠くに聞こえていた。その魔法使いは髭面の若くはない男のようだった。転移後の一瞬の隙を微かに見せたが、直後接近する俺に気づき、ほとんど教科書通りといってもいい完璧な姿勢を取り、俺の攻撃を最小限の動きで避けた。

 俺は対象を失った魔力の槍をさらにその男の背後へ向け、愛用している杖を片手に飛び掛りつつ、男の足元へ向けて黒い物体を飛ばした(俺は定義されている魔法を使うことが少ないので、魔法そのものに名前がなく、表現が難しい)。奴の首を刎ねるべく杖を振りぬいた。

 背後、足元、正面からの攻撃。いずれも乏しい魔力の持ち主では振りほどけないレベルのものだ。足元に放ったものは相手の動きをその場に固めておくための魔法で、より多くの魔力を割いた。一番肝心なものだからだ。

 男は足元のものは振りほどけないと判断したのか、第三の壁・絶対領域の強度を背後を中心として堅め、残りの魔力を使い俺に向けて高密度の魔力の塊をぶつけてきた。恐らくは今の二つの動作を合わせたものがこいつの瞬間魔力許容量(魔法でいう瞬発力のようなもの。どれほどの体力を持とうとも、一度に発揮できる力には差異がある)の限界だろう。

 奴の目の前に迫っていた俺は低く笑った。高密度の魔力が発する白い光に隠れながらも、男は俺の笑いを見たのだろう、少し怯えた表情が垣間見えた。

 俺は自由な方の手を前に差し出し、手の前の第三の壁を強めるとともに、その性質を変えた。奴の放った魔法は奴にそっくり跳ね返った。

 爆音とともに奴の首は俺の杖(鋭利なので刃物として使用することもできる)によって胴体から切り離され、宙を舞った。奴は身を守るために杖を握り締め、手を身体の前で交差させようとしたのだろう……、残された胴体は、中途半端な体勢のまま倒れこんだ。さらに自分の放った魔法を受けきれる程の魔力はなく、そうするしかなかったのだろうが、敵を目前にしてそんな受身の動作を取るとは致命的としか言いようがない。

 俺は最短のルートで目的地を目指し、上へと駆け上った。遅れてその髭男がいた階から大きな悲鳴が聞こえた。俺があの魔法使いを殺した姿を見て、固まった思考がようやく動き出したのだろう。祭りに人の死という、あまりにも噛み合わない光景から事態が飲み込めなかったに違いない。

 俺は一目散に目的の場所へと向かった。ビビのいる場所へだ。アルフェイリアにも既に来襲した魔法使いが一人迫っているようだが、アルフェイリアには魔法使いを含めた優秀な護衛がついている。セイもいることだし、そちらは何とかなるだろう。一方、ビビの元にはファルマがいる(無論その他にも一流でない魔法使いの護衛はいるが……)。曲がりなりにも、ファルマは一流の魔法使いだ。本来ならば安心すべきところだが……、俺は俺の中に沸き起こる不安をかき消すことができなかった。ビビのもとへ、レジーが向かっているのだ。

 先程俺が殺した魔法使いは、その対峙が一瞬であったと言えども、腕に覚えのある一流の魔法使いだったであろうことは推測できる(わざわざこちらに転移して寄越すぐらいなのだから、相応の実力者でないとその価値が無いので当然のことだが)。数少ない、レジーの組合にとっても貴重な人材であったろう。だが、それでも、このように俺とあの一流と推測される魔法使いの間には徹底的な差がある。決してファルマが弱い、頼りないと言うわけではないが、レジーを相手にしてしまえば流石に役不足というものだろう。ビビもろとも返り討ちだ。殺されるのか捕らえられるのかいずれにせよ、アルフェイリア、即ちルヴァオール国に致命的な打撃を与えるであろうことは火を見るより明らかである。その打撃は、今日より始まる戦の勝敗すら決めかねないだろう。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年04月11日 01:30 |
  2. SOD(小説)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ぷおー

ベタファンドット絵しあがらぬぇー。
ということでばあちゃん家いってくる!
ノートパソとペンタブもってくので、向こうでも相変わらず絵はちょくちょく描くと思うぜ。

拍手返信
>かえで
な・・・読んでしまった・・・だと?
残念ながらおっさんが活躍するのはもっと後ですげへへ。じじいがんばれ!
四月ネタにムスカ女体化・総受けサイトにしようかと小一時間悩んだけどやっぱやめといた。
  1. 2009年04月03日 10:38 |
  2. 戯言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。