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戯言がいっぱい。

めもちょー

Successor Of Dragon  その21

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「この部屋は?」

「魔方陣の雛形のストック所だ」

「これは?」

「夜になると発効するスタンドだ」

「あの飛んでいるのは?」

「見張りだな。そこらへんの使えない奴らどもよりも知能の高い鳥、イグリスという」

「迷子になんないの?」

「俺からすればな、お前のところの城の方が余程迷宮だ」

「うん、あれも迷うよね」

「アルフェイリアだけが唯一完全に把握しているようだな」

「測量とか得意だもんね」
「それはそこまで関係ないと思うが……アイツが建てた城じゃねえしな」

「でも一応改造はしてるんだよ」

「そりゃあ千年も昔のものをそのまま流用するわけにはいかねえだろう、ここのようにな」

「そんなにボロボロ?」

「建物的な意味ではそうでもないが、魔法的な意味ではな……」

 食堂から目的の場所への道のりはそう遠くはなかったはずなのだが、その間にもビビは辺りを物珍しそうにきょろきょろと見回しては俺を質問攻めにする。だが、一度質問した内容を深く掘り下げてくることはない。俺の簡潔な答えで納得できるわけもないにも拘らずだ。奴なりに頭の中で自己解決しているのだろう。面白いことに、いくつかの質問ではセイの方がより熱心に耳を傾けてきた。質問を深く掘り下げてくるのは奴の方だった。


「ねえシャドウ、この部屋もやる意味あるの?」

 たどり着いた部屋は、宿舎の一つ。だがかつてのこの部屋の住人は今や一人前の魔法使いとして社会貢献とやらをしているだろうから、今は蛻の殻となっている。多少埃のかぶった部屋の空気が敏感なセイには耐え難いらしく、俺に質問したその声音には明らかに不満が篭っていた。


「大有りだ。そうか、お前には実際に内容を見せたわけではなかったな。どんな部屋もいざとなった時には役立てるものだ。それ以上に、一つでも疎かにしたら、そのままそこが侵入経路となる可能性がある。俺がこれからかける魔法は、勿論個別用のも含まれているが、基本は全体で一つの役割をするものだ」

 この簡素な小部屋には、その部屋に似つかわしい小窓が備わっている。俺は身をかがめ、その小窓のちょうど下辺が適切な場所だと見定めた。まずは一番基本の土台。その壁をなぞるように手を当てながら、ゆっくりと薄い膜のようなもの(なんと表現すればいいのか分からん)を張っていく。ここがおざなりになってしまうと、後の行程が全て無意味となってしまうから、いくら手馴れていようとここの作業を急いてはならない。

 それが完了したら、今度はその上に魔方陣を描いていく。先ほど行った作業に怠りが無ければ、それがそのままこの魔法の耐久力となるだろう。大掛かりで、できるだけ長持ちさせたい、あわよくば永続的に作動させたい魔法の魔方陣を描く時は、その下に土台を敷いた方が良いと、俺の過去の研究成果が物語っている。

 今まで魔方陣は紙、重要な物は石版に描くものだという固定観念があり、俺のように壁にいきなり書き出すということは無かったため、この土台を築く発想が生み出されることは今までになかった。とはいっても、こんなことは別に革新的でも画期的でもなく地味としか言いようも無いもので、俺が生み出さずともいずれ何者かが着想していたであろうものだ。
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008年03月21日 02:44 |
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