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戯言がいっぱい。

めもちょー

Successor Of Dragon  その40

三章おわったーそして40記事めー。キリがいいなあ。
これからってところで止めるぜ
サイトで一気に見るならこちら







 だが、事を荒立てたくはない。俺は歩いた。俺が慌てている様を感じ取らせれば、俺の魔力を察知している他の魔法使い達は少なからず動揺してしまうだろう。セイからの合図は、目的が分からないためにどうしても焦りが出てしまうが、この場合は別だ。

 ファルマと目的の奴のいる場所は大分離れている。そのためセイが合図を送り続けてきたが、突然ぴたりと止んだ。どうやら俺がファルマの元へ先に行くことを理解したらしい。まあ、そう焦るな。


「あーっ、ちょっと聞いてよ! このじじいめっちゃくちゃ失礼なのよ!」

 どこかで聞いたような台詞を、しかも高い声で発しながらファルマは俺が来ると知るや大声を上げた。後ろ手に中年のむさくるしそうな男を引っ張っている。男は、俯きながら、こちらを見たくないというように顔を背けた。


「あんた一人で充分よねっ? レジーとセイとハイドとブライくらい、まとめてばったばったと倒せるんでしょ!?」

 それは、いくらなんでも流石に無理だ。一対一ならまだしも、まとめてそんな化け物軍団と相手できる奴がどこにいるか。

 どうやら、この中年男はセイの言っていた失礼なおじさんと同一人物なようだ。懲りずに同じ話をしていたところを、ファルマに捕まったというところだろう。


「それはともかく、お前」

「ねっ、無理なんて言わないわよね、まさか言わないわよね!」

 どうやら、その質問にはいと答えない限り、まともな話はできそうになさそうだった。そして、この質問には周りの組合員含めた魔法使いだけではなく、その場にいた誰も彼もが注目していた。

 不安を払拭したいのだろう。そこではいと答えることは前面的な俺の組合の優位性を示すことになる。だからこそはいと答えてやりたいところだが、嘘はつけん。実際にそんな場面に遭遇することはないものと願いたいが、残念ながらそのレベルの魔法使いともなると、一人増えるごとに相手にする厳しさは飛躍的に増す。連続して戦うのも正直いってどうかというところだ。


「知るか。そんなことより」

 俺は軽くファルマの足を踏んだ。


「痛っ。なにすんの……、ちょ、っと………。……」

 俺は足元にファルマに分かるように魔法で文字を浮かび上がらせた。俺の無駄に派手な服が丁度よい具合に周りを囲ってくれる。


「そんなくだらん話をしていたのか」

 伝言を伝えた後、俺は話を続けた。


「まあね。だってこのじじい、何にも分かってないのよ。ま、そりゃ私もね、あんたがひ弱だとは思うけどさ。でもこの油ぎったじじいに言われる程ではないわよね、もう。私、気分を害したから、失礼するわ!」

 俺がその男に制裁を加えることを望んでいたようだが、俺の伝言は伝わったようで、ファルマはその男を突き放すと分かりやすく苛立ちながらその場を去った。魔力を感知するにビビの元へ向かったようだ。それでいい。

 残された男は俺を見上げてひっ、と短き、数歩下がったが、俺はどうでもいいそんな男のことはどうでもいいので無視し、やや早足で二階の一般会場の兵士宿舎側へ向かった。


 少し歩いたところで、セイからの合図が来た。どうやら、今のやりとりの間にもかなり移動したようだ。セイの合図から統合すると、一階へ移動しているらしい。俺はより慎重に歩いた。つくづく、地図を頭に叩き込んでおいて正解だったと思う。人ごみに紛れながら一階に降りた途端、俺の目は人ごみを避けるように奥へ……厠のある訳でもなく、今はほとんど人がいないはずの兵士宿舎へと歩く何者かの後姿を捉えた。こういう時には、不思議な勘が働くものだ。酒を浴びすぎて宿舎に帰るには、あまりにも早い。まだその時間帯ではない。警備の任を与えられず、休みをもらい祭りに興じる中、具合を悪くしてしまった者である可能性もあるが……。

 俺は兵士宿舎に通じる道とは別の道へと歩もうとした。セイからの合図が来る。また別の通路。これも合図が来る。幸いなことにこの会場には俺の顔を知っている者はいないようで、ただの一魔法使いとして認識されているのだろう、すんなりと動ける。ほろ酔い状態の中のむわっとした独特の空気は不快だが、仕方あるまい。

 俺は確認のため、この広場から通じるいくつかの別の通路を虱潰しに歩もうとした。そして何処もすぐにセイからの合図、俺の耳につけてある魔道具がかたかたと振動し、俺は引き返した。

 最後に怪しいと踏んだ兵士宿舎への通路へ向かった。セイからの合図はこない。なるほど。正解の様だ。

 ここにはさしたる魔法使いもいない、俺の意識の壁がそう言っている。俺は自分に幻影魔法をかけた。そして何食わぬ顔で通路を歩く。前方に白い影が見えた。間違いない。

 白い影は通路を曲がり、視界から消えた。問題ない。どこへ行こうとしているか、地図を叩き込んだ俺には一目瞭然だ。兵士宿舎、そして訓練場を抜けて、外へ……。俺の予想と一致している。

 そうと決まれば話は早い。この周辺には俺と奴以外人はいない。そして俺の姿は非魔法使いには見えないし、足音も聞こえない。俺は一目散に走り出した。そして奴の後ろ首を捉えると、壁に叩きつけた。同時に幻影魔法を解き、代わりに……どうやら若い男のようだ……を魔法で壁に貼り付けた。

 男は一瞬悲鳴のようなものを出し、その後は身体の自由を奪われ、壁に貼り付けられたまま愕然とした顔で俺を見つめている。案の定、こいつは魔法具を持っていた。俺はそいつの懐にある魔法具を魔法で中に浮かせて取り出し、手に取った。小さな鐘の形状をした、金属製のものだ。俺はその魔法具の優秀さに感動を覚えた。相手の作った道具に感心している場合ではないのだが、なるほど、俺の組合で作られたものよりも高性能だ。


「この魔法具なら、音を出すだけの単純なものだが、ル・ルヴァオールへ侵入したばかりの貴様等の仲間らに合図を送るのにものの十分とかからんだろうな。そろそろ貴様の目的通り、軍に合図も届く頃だろう。素晴らしい道具だな。俺もここまでのものは中々作りだせん。さて……」

 アルフェイリアに具体的な裏切りの通知が届いてから、もう少しで丁度十分が経とうという頃だろう。
 俺はこの若造の目の前で、真っ黒い刃状のものを作ってみせた。

「こいつは鉄よりも良く切れるぞ、未来ある若者よ。この合図が持つ意味を教えて欲しいんだがな」

 さらにその鐘状の魔法具をその男の目の前に押し出す。だが口を割らない……というよりは、恐怖で思考が回らないといった様子で、口をぱくぱくとさせながらよく分からないことを呟いている。目には涙が浮かんでいる。息を切らしながら必死で、俺から目を背けようとしながらも俺を見続けている。


「俺を誰だか知っているようだな。なら話は早い」

 だが、合図を送れという命令だけ与えられ、合図の意味を知らされていない可能性がある。この若造を見るに、その可能性のほうが高いだろう。ならば、他に何か有用な情報をこいつから引き出せないものか。

 俺は作り出した刃を男の首筋に当てた。


「質問を変えてやろう。あの五万の軍隊の中に魔法使いは何人、そして誰が含まれている?」

 いないはずがない。そんな無計画な出陣などあろうはずもない。


「ま、まほうつかいは……、」

「魔法使いは」

「ば、化けも……あんたの……おと、レジー様がっ」

 その瞬間、探知するまでもなく、身体を貫くようにして感じる強大な魔力を持った魔法使いの突如の出現とともに、強い耳鳴り……かつてない程協力に発せられたセイからの合図を受け取った。
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009年03月11日 06:42 |
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